物件契約前に確認したいチェックポイント10項目(ハノイ駐在日本人向け)
ベトナムで物件を決める際、日本の常識とは違うポイントが多くあります。特に初めての駐在では「こんなはずじゃ…」と後悔しないために、契約前にしっかり確認したい10のチェックポイントをまとめました。この記事では、日本人視点で起こりがちなトラブル事例や対策を交え、解説していきます。
1. 言語対応(オーナー・管理人・契約書)
ベトナムでは不動産契約の文化が日本と異なり、口頭での約束が多いため、トラブルになることがあります。例えば「電気代込み」と聞いて契約したのに後から請求されたり、「3カ月前通知でペナルティなし」と聞いていたのに実際は家賃1か月分を取られた例もあります。対策としては、契約書を必ず英語(できれば日本語訳も)で確認し、口頭の約束も書面に反映してもらいましょう。管理人やオーナーとのやり取りも、日本語はまず通じないと思って準備が必要です。可能なら日系不動産会社を通して、日本語対応のスタッフに間に入ってもらうのが安心です。
2. 水回り(給湯器・水圧・シャワー温度安定性)
ベトナムでは水道水がそのまま飲めないのが普通です。多くの物件ではウォーターサーバーか浄水器が設置されており、月19Lタンクを複数設置して水を確保するのが一般的です。また給湯器の容量にも注意が必要。ホーチミン在住者の報告によれば、洗面所の給湯器は容量が決まっており、一度使い切るとお湯がぬるくなって15分ほど待たないと再度お湯が出ない場合があります。バスタブで湯をためる場合は特に容量不足になりやすいので(多くの給湯器は20~50L程度しかない)、シャワー利用中心になることを念頭に置きましょう。また水圧や温度の安定度も日本ほど高くないことが多いので、内見時に実際にシャワーを出してみて水圧や温度調整の具合を確かめるのがおすすめです。
3. セキュリティ(警備員・ドア鍵・建物入口)
ベトナムの住宅は、日本よりセキュリティ体制が各物件でばらつきます。高層コンドミニアムやサービスアパートでは24時間警備員が常駐していることもありますが、そこでも注意が必要です。契約前に「24時間警備体制が整っているか」を必ずチェックし、ゲートや玄関のオートロックの有無も確認しましょう。警備員が当番制で昼寝していたり、建物入口が施錠されていなかったりするケースもあります。一方、サービスアパートはレセプションが24時間常駐している物件が多く、外部からの不審者侵入リスクは低めです。ただしサービスアパートでは清掃スタッフが部屋に出入りするため、内部からの盗難にも注意が必要。貴重品は部屋の金庫に保管し、鍵は大家や清掃係に預けきりにしないなど自己管理を徹底しましょう。玄関や裏口の鍵は頑丈か、複数かけられるかも確認しておくと安心です。
4. 騒音環境(近隣工事やカラオケ)
ベトナムの都市部では騒音トラブルが日本より多いので要注意です。隣がカラオケ店だったり、週末や深夜も工事が行われていたりといった例は珍しくありません。ベトナム人はドアを開けっぱなしにしてカラオケをしたり料理をしたりする文化があり、その音・匂いが上階や廊下に流れてくることもあります。また同じ建物の住人でも、週末の大人数パーティーや子どもの足音などが気になることがあります。内見時には周囲の部屋が実際に住まわれているか、ベランダや廊下に家具・自転車が置いてないかなどを確認し、可能なら隣人の生活スタイルを不動産屋に尋ねましょう。高層階だからといって騒音がゼロになるわけではないので、工事音やカラオケ音に敏感な人は特に注意が必要です。
5. インターネット環境
ベトナムのインターネット事情は日本よりやや不安定であることが多いです。主なプロバイダーはFPTやViettel、VNPTですが、各社とも料金プランが多岐にわたります。契約前に回線速度や工事日数の目安を確認し、必要なら24時間サポートがつくかも調べておきましょう。海底ケーブル切断事故で国際回線が一時停止し、夜間になると速度低下が起こることもあり、冗長回線や複数契約で対策する企業もあります。物件によっては光ファイバーやADSLが最初から設置済みの場合があるので、内見時にWi-FiルーターやLAN口の有無を必ず確認しましょう。
6. 家具・家電の状態と内容
ベトナムの賃貸住宅は家具家電付きが主流です。冷蔵庫、洗濯機、エアコン、ベッドなどが最初から備え付けられていることも多く(ただし古いものもあります)、家具を揃える手間が省けるメリットがあります。内見では設置されている家具・家電をひとつひとつチェックしましょう。メーカーや動作状態を確認し、不具合があれば契約前に修理・交換を依頼します。日本人向け物件では、希望すれば日本製の冷蔵庫・洗濯機などに交換してくれる場合もあります。また、使い勝手に合わない不要な家具が置いてあれば撤去できるかオーナーに相談するのもポイントです。部屋の広さ・収納力も日本人の感覚と異なることがあるので、クローゼットや靴箱の有無にも注目しましょう。
7. ゴミ出し・掃除のルール(サービスアパートとの違い)
ベトナムではゴミ出しのルールが日本ほど厳格ではありません。サービスアパートに住む場合は、清掃スタッフが家賃込みで日々部屋の掃除やゴミ出しを行ってくれるのが一般的です。一方、**コンドミニアム(個人オーナー契約)**では共用廊下の各階にゴミ捨て場があり、住人が自由な時間にそこへゴミを出せます。回収日を待たずに毎日出せる点は便利ですが、その分ゴミ捨て場が臭いや虫の原因になることもあります。ゴミ袋は有料指定袋などはなく、スーパーのレジ袋など何でも使えます。掃除サービスの質には当たり外れがあり、家賃の高いサービスアパートであればトラブルは減りますが、安価なところでは清掃の手抜き(ゴミを出さない、掃除を丁寧にやらない等)も聞かれます。契約前に清掃の頻度や対象範囲を確認し、入居後も清掃担当者と良好なコミュニケーションを取るよう心がけましょう。
8. 立地と周辺施設(スーパー・病院・日本食店)
物件選びでは「周辺環境」も重要です。日本人駐在員が多いバーディン区やハイバーチュン区などのエリアには、日本食レストランや食材店、日系スーパーが集まっています。例えばキンマー通り周辺には日本食レストラン街があり、日本食材スーパー「TOMIBUN」や「HANOI商店」などもあります。日常生活に必要なスーパー(Vinmart、AEON、Lotteなど)やコンビニも徒歩圏内か確認しましょう。病院やクリニックに関しては、日系病院があるかどうかや国際基準の総合病院(Vinmec、Pacific Hospitalなど)へのアクセスもチェックポイントです。Hai Ba Trung区にある複合施設「Times City」内には大型ショッピングモールや病院、学校が揃っており、利便性が高いエリアです。職場や日本人学校への通勤・通学時間、交通手段(メトロ駅や主要道路への距離)も合わせて確認すると良いでしょう。
9. 虫・カビなどの衛生面
ハノイは年間を通して高温多湿な気候のため、ゴキブリ・ヤモリ・蚊・アリなどの害虫が出やすい環境です。一般に、高層階に住むほど羽虫類は少なくなるため、虫が苦手な人はなるべく上階を選ぶと多少は楽になります。しかし驚くことに、29階でもヤモリが出ることがあるくらいです(ヤモリは家の守り神とされていますが、慣れないとビックリしますね)。キッチンやバスルームまわりに隙間がないか確認し、気になる場合は防虫対策を考えましょう。また、浴室や壁の隅にカビが生えていないかもチェック。長雨の季節は室内の通気が悪いとカビや結露が発生しやすいので、換気扇や窓の通風設備が整っているか確認しておくと安心です。
10. 契約条件(デポジット、解約時ルールなど)
契約時の金銭条件も要確認ポイントです。駐在者向け物件では通常、**保証金(デポジット)**として家賃1~2カ月分が必要となります。目安として月額家賃2カ月分程度を請求されるケースが多いです。退去時にはこのデポジットから修繕費用が差し引かれることが一般的です。また契約期間中の解約ルールにも注意が必要。ベトナムでは「3ヶ月前通知でペナルティなし」と口約束されても、実際には1ヶ月分の家賃を違約金として差し引かれた例が報告されています。契約書には清算方法や違約金のルール、敷金返還時期などが明記されているか必ず確認しましょう。加えて、広告で家賃が安く見えても実は管理費や電気・水道代が別請求という落とし穴があります。プールやジム利用料が家賃に含まれていない場合もあるため、家賃に含まれる費用(All inclusiveか)と含まれない費用を契約前にすり合わせておくことが大切です。
以上の10項目をしっかりチェックすれば、ハノイでの物件契約後に「こんなはずじゃなかった!」という後悔を減らせます。現地の不動産会社や先輩駐在員のアドバイスを参考にしながら、安全で快適な新生活のスタートを切りましょう。